シェキ(アゼルバイジャン)の頂に佇むシェキ・ハーン宮殿は、カーン朝時代の精緻な工芸と建築技術を今に伝える壮麗な遺構です。18世紀後半に統治者シェキ・ハーンの避暑邸として建てられ、外装・内装ともに鮮やかな壁画や幾何学模様など、細部に至る驚くべき装飾が施されています。
宮殿のもっとも目を惹く特徴の一つがシェベケです。接着剤や釘を使わず、何千もの木製格子と色ガラスを組み合わせて作る伝統工芸で、宮殿の窓はこの技術の見事な実例となっています。光は6つの部屋、4本の回廊、2つの鏡張りのバルコニーを通して万華鏡のように広がります。
各室は神話の鳥や庭園、動物を描いた細密画でそれぞれ異なる表情を見せ、使用された顔料は天然由来です。壁や天井は創建当時の佇まいを色濃く残しており、シェキ・ハーン朝に育まれた高度な壁画文化を生々しく伝えます。
また、宮殿内のさまざまな部屋は使節の接遇やシャーの静かな学びの場など用途に応じて使い分けられ、内密な会話を覆い隠すために稼働させることができる小さな噴水のような仕掛けも備えられていました。
王家の主要邸宅ではなかったものの、この宮殿は戦争や帝国の興亡をくぐり抜けて現存し、数度の修復を経て現在はアゼルバイジャン建築遺産の輝かしい例となっています。約500年以上にわたりこの宝を見守ってきた2本のプラタナスの古木が宮殿を護っています。知識豊かな現地ガイドの案内で、シェキ・ハーン宮殿の豊かな歴史と美に心ゆくまで浸ってください。
